この2つ、「自動化ツール」という括りが雑すぎる
Make.comとPower Automate。どちらも「ノーコードで業務を自動化するツール」と紹介されますが、実際に並べてみると、生まれも育ちも別物です。Makeはチェコ発の独立系で、あらゆるWebサービスを対等につなぐ思想。Power AutomateはMicrosoft製で、Microsoft 365という帝国の中を自動化する思想。
だから答えを先に言ってしまうと、会社がMicrosoft 365中心ならPower Automate、それ以外ならMake。この記事は、その結論の根拠を料金と機能で確かめていく構成です。
立ち位置の違い:独立系の万能ハブ vs Microsoft帝国の内政官
Make.com=サービスの垣根なくつなぐキャンバス
Makeは1,500以上のアプリを、視覚的なキャンバス上でつないでいくツール。Gmail、Slack、Notion、ChatGPT、Webhook——どのサービスも対等な「モジュール」として扱われ、ドラッグでつなぐだけで自動化の流れ(シナリオ)が完成します。私はこのブログの記事生成をMakeで組んで運用していましたが、処理の流れが図として見えるので、複雑な分岐でも頭に入りやすいのが良さでした。
Power Automate=Microsoft 365の中を流れる水路
Power AutomateはOutlook、Teams、SharePoint、Excelといった Microsoft製品との統合が本体です。「Teamsに投稿されたらExcelに記録」「承認フローをOutlookで回す」のような社内業務の自動化は、追加費用なしで始められることが多い。しかも、PCの画面操作そのものを自動化するデスクトップRPA(Power Automate Desktop)がWindows 10/11に無料で付いてくる。これはMakeにはない武器です。
料金比較:ここに一番大きな罠がある
| 項目 | Make.com | Power Automate |
|---|---|---|
| 無料で使える範囲 | 月1,000オペレーション・シナリオ2個 | M365付帯なら標準コネクタのクラウドフロー/Desktop版RPAは無料 |
| 有料の入口 | Core:月$9(約1,350円) | Premium:月2,248円/ユーザー(年払い・税抜) |
| 外部サービス連携 | 無料プランから1,500以上 | プレミアムコネクタは有料(Salesforce、HTTPなど) |
| 大量処理向け | プラン上位でオペレーション追加 | Process:月22,488円/ボット |
注意してほしいのがPower Automateの「無料に見えて無料じゃない」構造です。Microsoft 365のライセンスに含まれるのは標準コネクタだけ。外部SaaSとの本格連携やHTTPリクエストは「プレミアムコネクタ」扱いで、ユーザーごとに月2,248円のPremiumが必要になります。ここだけの話、HTTPリクエストすら有料の壁の向こうにあるのは、Makeユーザーから見るとかなり驚く仕様だったりします。
一方Makeは、無料プランの時点で1,500以上のアプリとHTTP/Webhookが全部使える。個人が「いろんなサービスをつなぎたい」なら、コスト構造はMakeが圧倒的に素直です。
※料金は2026年7月時点の情報です。特にMicrosoftのライセンス体系は改定が多いので、最新は各公式サイトで確認してください。
項目別比較
| 比較項目 | Make.com | Power Automate |
|---|---|---|
| 操作画面 | キャンバス型。流れが図で見える | リスト+フローチャート型 |
| 日本語UI | なし(英語のみ) | あり |
| Microsoft製品との統合 | ○(コネクタ経由) | ◎(本体そのもの) |
| 外部SaaS連携の広さ | ◎ | ○(プレミアム課金前提) |
| デスクトップRPA | なし | ◎(Windowsに無料付帯) |
| 複雑な分岐・データ加工 | ◎ ルーター・イテレーターが強力 | ○ |
| ライセンスのわかりやすさ | ◎ シンプル | △ 初見では把握困難 |
Makeの強みと気になるところ
強みは、コスパと表現力。無料枠から外部連携がフルに使え、複雑な条件分岐やループもキャンバス上で直感的に組める。個人や小規模チームが「SaaSを横断する自動化」を作るなら、頭ひとつ抜けています。
気になるところは2つ。UIが英語のみなこと(操作自体はアイコンベースなので、実際の壁は見た目より低いですが)。そしてPC内のローカル操作は自動化できないこと。「Webサービス間」がMakeの領土で、デスクトップは領土外です。
Power Automateの強みと気になるところ
強みは、Microsoft環境との一体感と、無料のデスクトップRPA。会社支給のWindows PCで「毎朝のExcel転記を自動化したい」なら、追加契約ゼロで今日始められる。日本語UIと日本語情報の多さも、英語が苦手な人には効きます。
気になるところは、ライセンス体系の複雑さ。無償版・M365付帯・Premium・Process・従量課金と階層が多く、「やりたいことにどのライセンスが必要か」を調べる段階で消耗します。正直、この調査コスト自体がPower Automate導入の隠れた初期費用です。
用途別の選び方
個人・副業・小規模チームでSaaSをつなぎたい → Make
Gmail、Slack、Notion、AI連携。この世界の住人なら迷わずMake。無料で始めて、足りなくなったら月$9。
会社がMicrosoft 365で回っている → Power Automate
Teams・Outlook・SharePoint中心の社内業務なら、既存ライセンスで始められるPower Automateが自然。情シスの承認も取りやすい。
PCの画面操作(レガシーシステムへの入力など)を自動化したい → Power Automate Desktop
ここはMakeでは代替できません。Windowsなら無料なので、試さない理由がない。
両方の世界に足がある → 併用もあり
社内はPower Automate、外部SaaS連携はMake、という分担は普通に成立します。どちらも無料で始められるので、1つずつ小さいフローを作って肌に合う方を見極めるのが確実です。
よくある質問
初心者にはどっちが簡単?
日本語UIと情報量ではPower Automate、構造のわかりやすさではMake。「英語アレルギーがなければMake、あればPower Automate」くらいの分かれ方だと思います。
AIとの連携はどっち?
MakeにはOpenAI・Anthropic・Geminiの公式モジュールがあり、シナリオにAI処理を挟むのが簡単です。Power AutomateもCopilot統合が進んでいますが、Microsoft外のAIモデルを柔軟に使うならMakeに分があります。
Zapierとの三つ巴で見ると?
Zapierはシンプルさ特化で最安有料が月$29.99と高め。コスパと表現力のMake、Microsoft統合のPower Automate、簡単さのZapier、という三角形です。
Make.comを試してみたい方は、無料プランから始められます。
まとめ
Make.com vs Power Automateの答えは、ツールの優劣ではなく自分の環境で決まります。Microsoft 365の中で生きているならPower Automate、SaaSを横断して個人や小規模で自動化を組むならMake。判断に迷うなら、「自動化したい作業を3つ書き出して、それがMicrosoft製品の中で完結するか」を見てください。完結するならPower Automate、1つでも外部サービスが混ざるなら、Makeの方がたぶん幸せです。


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